大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和29年(う)1465号 判決

被告人 森村善吉

〔抄 録〕

刑法第二十七条にいわゆる刑の言渡はその効力を失うとは具体的な刑の言渡の効力を将来に向つて消滅させるだけでなく有罪の確定判決のあつたという事実自体をも抹消し、被告人はその後においては不利益な待遇を受けない即ち過去において刑の言渡がなかつたと同様な法律的待遇を与えようとする趣旨に解釈しようとするのは一理あるもののようであるが、現行法上右法条にいう刑の言渡はその効力を失うとは刑の言渡に基く法的効果が将来に向つて消滅するというだけの趣旨であつて、刑の言渡を受けたという既往の事実そのものまで全くなくなるという意味ではないのである。(最高裁判所第一小法廷昭和二十九年三月十一日判決、判例集八巻三号二七〇頁趣旨参照)従つて執行猶予の期間を経過した後と雖もその裁判は刑法第四十五条後段にいわゆる或る罪につき確定裁判ありたるときに該当するものといわなければならない。(名古屋高等裁判所昭和二十八年七月二十八日判決高裁判例集六巻九号一二二三頁参照)しかして被告人は(イ)原判示第一の(四)と(五)との間即ち昭和二十四年六月二十日新宿簡易裁判所において窃盗罪により懲役一年、三年間執行猶予の判決を受け(該判決は同年七月五日確定)ているから、原判決認定の判示第一の(一)ないし(五)の事実は刑法併合罪の規定の適用上右確定判決により二分され、右判決前の事実と後の事実とについてそれぞれ別個の刑が言い渡されなければならない。原判決が刑法第二十七条の趣旨を前記冒頭の如く解釈して執行猶予期間の経過に伴いその裁判はその存在を失つたものとして、判示第一の(一)ないし(五)の事実全部を一箇の併合罪と認め一箇の刑を科したのは、結局刑法第二十七条及び同法第四十五条の解釈を誤つたものであつて、右は判決に影響を及ぼす法令違反であるから、この点において原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!